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東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)152号・昭52年(行ケ)42号 判決

一 請求原因一ないし三の各事実、すなわち、本願考案についてされた実用新案登録出願から本件審決の成立に至る特許庁における手続の経緯及び脱退原告から当事者参加人への実用新案登録を受ける権利の移転とその届出、本願考案の要旨並びに本件審決の理由については、いずれも当事者間に争いがない。

二 そこで、当事者参加人が主張する本件審決の取消事由の有無につき判断する。

(一) 取消事由(一)の主張について

当事者間に争いのない本願考案の要旨及び成立に争いのない甲第二号証(本願考案の明細書)によれば、本願考案は、簡単に製造できかつ内部抵抗の小さい熱電対を提供することを目的とするものであるところ、保護管が頭部の外径よりも僅かに小さい内径を有する引抜き管をもつて形成される構成であるため、屑を生ずる加工(切削加工)が不必要であるという効果を奏し、この効果は、多量に生産される熱電対の製造において重要な利点であるとされていることが認められる。

しかしながら、本件審決が認定するとおり、一般に、金属管を引抜きによつて形成することが周知技術であり、本願考案のように保護管を引抜き管をもつて形成することには何らの困難性もないことは、当事者参加人自身も自認するところであり、また、引抜き加工が、屑を生じない材料加工方法であつて、金属管など多量に生産される部材の加工において慣用されていることは、機械工作技術上の常識であるから、切削加工が不必要であるということは、引抜き管が一般的に有する自明の効果であり、本願考案の右効果は、特に熱電対の保護管を引抜き管をもつて形成することによつて、引抜き管が一般に奏する効果以上に特段のものであるとは認められない。

右のとおりであるから、本願考案が保護管を引抜き管で形成する構成を採つたことは何ら考案力を要せず保護管の形成方法を単に周知技術の一つに限定したにすぎないとした本件審決の判断に誤りはなく、この点に関する当事者参加人の主張は理由がない。

(二) 取消事由(二)の主張について

前掲本願考案の要旨及び甲第二号証によれば、本願考案は、前認定のとおり、簡単に製造できかつ内部抵抗の小さい熱電対を提供することを目的とするものであるが、保護管23の頭部に近い方の端部が外側接地導体12の外径になるまで拡げられ、この端部が、外側接地導体12の基端上にはめられ、同時に接地導体12と分離しないように結合される固定筒18を形成している、すなわち、固定筒を保護管と一体に形成する構成であるところから、固定筒を別個に形成する場合に必要となる部品が不必要であり、また、保護管と固定筒との接合部分、ろう着個所がないため、接触抵抗がなく、接地導体としての保護管と中心導体との電気的接続部は、熱電対として必要な接点以外になく、両導体間の抵抗を小さくして検出感度を高めるという前記目的に沿う効果を奏することが認められる。

ところで、本件審決が認定するとおり、管状体の先端に膨出部を形成する場合、これを一体的に形成するか、あるいは、別体として形成したものを適宜の手段で結合するか、いずれかによるのが通常であることは、当事者参加人も自認するところであり、また、一般に、機械工作技術の分野において、二個の部材を一体的に形成することは、部材の工作方法として慣用される手段であり、その方法をとれば必然的に、結合のための特別の部品や両部材を結合するための接合、ろう着をする必要がないという効果が生ずることは、顕著な技術常識である。してみると、本願考案において、固定筒を形成するための部品が不要であり、保護管と固定筒とを結合するための接合やろう着が不要であるとしても、それは、部材の一体的形成という通常の工作手段から当然かつ容易に収めうるものにすぎず、熱電対において保護管と固定筒とを一体的に形成することによつて生じた特段の効果ということはできない。

さらに、熱電対のような電気部品については、一般に、接触抵抗(内部抵抗)をできるだけ小さくすることが性能向上のため要請され、接合、ろう着個所が少ないほど接触抵抗が小さくなることはいうまでもないところ、前記のとおり、二個の部材を一体的に形成した場合、必然的に接合やろう着が不必要になるから、接触抵抗が減少することも当然かつ容易に予測されうる範囲の効果である。したがつて、接触抵抗(内部抵抗)が小さくなり、熱電対の検出感度が高まるという本願考案の作用効果は、通常用いられる工作手段たる二個の部材(保護管と固定筒)を一体的に形成することに付随する自明の効果にすぎない。

以上のとおり、本願考案について奏するとされる前記各作用効果は、いずれも本願考案の特段の効果とはいえないからこの点についても本件審決の判断に誤りはなく、当事者参加人の主張は理由がない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める当事者参加人の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

熱電対の頭部において、ピン状の内側通電導体が絶縁中間空所を置いて筒状の外側接地導体によつて取囲まれ、両導体が頭部の端部においてのみ熱接点を介して導電的に結合され、内側通電導体の基端に冷接点を介して絶縁中心導体が接続され、外側接地導体の基端上に、これと分離しないように結合されて熱電対の固定に役立つ筒がはめられ、中心導体を包囲する保護管が接地導体としてこの固定筒に接続されているものにおいて、保護管23が頭部10の外径よりも僅かに小さい内径を有する引抜き管から形成され、保護管23の頭部10に近い方の端部が、外側接地導体12の外径になるまで拡げられ、この端部が外側接地導体12の基端上にはめられ、同時に接地導体12と分離しないように結合される固定筒18を形成していることを特徴とする熱電式点火安全装置用の熱電対。

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